安全なラックマウント作業を行なうDC専用リフト【ServerLIFT SL500】

開発:ServerLIFT
国内販売:ブルーオーシャン合同会社
http://www.blueocean-llc.com/j/index.html

text:廣澤 純

サーバーなどのIT機器をラックにマウントする作業は、なかなか大変な作業である。ハードウェアベンダーと機種にもよるが、1台のラックマウントサーバーでもだいたい10kg以上、しかも、最近のフルサイズのサーバーは、奥行きがかなり長い。サーバーの両脇から2人でこれをマウント部分のレールに水平に持ち上げて挿入し、前後位置の調整やドライバーで固定する作業は、狭いラック間の通路で行うのはかなり辛い作業だ。特にラックの上部や中腰にならざるを得ない位置は、肩や腰にかなりの負担がかかる。5台以上をマウントするとなると、これはもう重労働の域に達する。

最近は、ブレードサーバーのエンクロージャをマウントする必要もあるが、これも数十kgはある。10枚以上のサーバーブレードを搭載すると、100kgは軽く越えるほどの重さになり、これを人手で移設することは、あまり考えたくない作業である。

IT機器を大量に入れ替えるような場合は、外部の専門業者に委託できても、データセンター内での日常的な運用にともなうメンテナンスでは、サーバーやIT機器の設置、移設作業はITスタッフが手作業で行うのが普通で、若手の仕事の1つぐらいにしか思われていない。しかし、こうした当たり前の作業が、実は機器の落下、損傷のみならず、スタッフの怪我などの危険性をはらんでいることは、少し考えれば誰もが想像できることである。

DC専用リフトで安全性・生産性をアップ

こうしたデータセンター内でのIT機器設置・撤去にフォーカスして、作業時の安全性を高め、しかも作業効率を高める製品として開発されたのが、ServeLIFTである。最大225kgの機器を2.4mの高さまで安全にリフトできる。また、71cm通路の通り抜けが可能なので、狭いデータセンター内の通路でも容易に操作できるように設計されている(図1)。バッテリーの充電部分を内蔵しているが、これも液漏れ対策を施した設計となっている。ServerLIFTを使用すれば、100kgを超えるブレードサーバーでも1人で移設が可能となる。

図1 SL500の特徴

図1 SL500の特徴
ServerLIFT SL500 は最大225kgの機材の昇降が可能データセンターに導入した機器を安全に設置・撤去できるように設計されている。(出典:ブルーオーシャン)

価格は、本体198万円(税別)。梱包材から機器を取り出すための拡張オプションは、19万2000円(税別)。開発会社は、米ServerLIFT。

実際にサーバーをマウントするデモ映像がWebサイトで公開されているので、自分の目で確認してみるのがいいだろう。

図2 サイドシフトプラットフォーム

図2 サイドシフトプラットフォーム
サイドシフトプラットフォームは、左右に15cmスライド可能なためラックへのインストールが容易。(出典:ブルーオーシャン)
表1 SL500仕様

表1 SL500仕様

BCPが要求する「サービスの機能と品質」を提供するデータセンター

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BCPが要求する「サービスの機能と品質」を提供するデータセンター

東日本大震災から1年が経過し、企業のBCP(企業継続計画)への取り組みが変化してきた。震災直後から計画停電の時期にかけては、ビジネスを続けるために必要なシステムや重要データをいかに遠方に避難させるかという問題に関心が集まり、データセンターにもDR(災害対策)やバックアップについての問い合わせが相次いだ。しかし、保険的な側面のあるBCP、DRのための経費獲得は容易ではなく、このタイミングで導入を果たした企業は少なかった。ところが、新年度予算を決定するこの時期になって、再び案件が活発化してきた。クラウドサービスで一般化したSLA(サービス品質保証)的な考え方で、各企業は自社のBCPニーズの整理を開始している。

すべてのシステムがまったく停止しないにこしたことはないが、個々のシステムの復旧時間はどこまで許容できるか? すべてのデータのリアルタイムバックアップが安全な場所に存在するのがベストだが、保管にあたっての各データのプライオリティはどうなのか? 限られた投資で、最低限必要なBCP対策を可能にするには、どんな取り組みが必要なのか? 

安全、安心といった総合的なキャッチフレーズを受け入れるのではなく、細分化した個別の要求を実現できるサービスの機能と品質を企業は検討し始め、データセンターもこれらのニーズに応えられる環境と新サービスの提供を開始している。

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業界定番の警告灯が大幅バージョンアップ【警子ちゃん4Gシリーズ】

株式会社アイエスエイ
http://www.警子ちゃん.com/

text:廣澤 純

第4世代の警子ちゃんシリーズ

図1 本体外観

図1 本体外観

データセンターのみならず、コールセンター、医療機関、学校、観測所など、幅広い分野で警告灯の定番製品として利用されている「警子ちゃんシリーズ」の第4世代がリリースされた。1年前に第3世代がリリースされたときには、ボディカラー、インターフェイス、ランプ数、レンズ色の組み合わせが自由に行えるようになり、機能面でも監視ノード数とSNMPトラップの種類の増加や処理の高速化が実現されるなど、かなり大幅な機能拡張が図られていた。が、今回のバージョンアップでは、外観は第3世代と変わらないものの、警告灯のアーキテクチャそのものの見直しが図られ、機能的には前回よりも大幅な変更となっている。

まず、CPUにはMarvell ARM(1.2GHz)を採用したことで、メモリ空間の拡大とともに、処理性能が大幅に向上している。ネットワークインターフェイスも昨今の広帯域化に対応し、1Gbitイーサネットのインターフェイスを搭載、加えて、無線LANの搭載機種も用意された(DN-1500GL-A----)。無線LANの用途にはいろいろ考えられるが、1つにはデータセンター内の有線側の帯域に負荷をかけないよう、センサ系のネットワークを無線LANに集約する、あるいはスマートフォンを端末にして、監視情報を取得するなどといった使い方が考えられる。無線LANモジュールが別売されているため、後からアップグレードするパスも用意されている。こうした拡張は、主にユーザーからの要望に応えたものだという。

ネットワーク機能、監視機能についても、最近のネットワークインフラの状況変化に対応して、いくつかの点で拡張されている。1つはIPv6への対応だ。IPv4とIPv6の両スタックをサポートしたことで、今後のIPv4、IPv6混在環境に対応することが可能になった。監視対象は、ルータ越えを含め最大60個まで(監視ノード数20個、SNMPトラップ40個)設定できる。また、SNMP v3へ対応したことも目玉機能の1つだろう。これは、最近増えてきた、1装置内に複数の機器を内蔵するネットワーク接続機器に対応するためだ。これにより、文字列を含む最大5個までのバリアブルバインディングスによる判定(最大32文字/文字列)が可能になった。

警報・通知機能にも拡張がある。これまでの光(ランプの点灯・点滅)と音(ブザーの鳴動)、メール、IPメッセンジャーに加え、音声メッセージが利用可能になった。MP3形式で最大20個のメッセージを登録可能(サイズは最大10MBまで)になっている。ユーザー自身が市販のボイスレコーダや読み上げソフトで音声データを作成し、登録することができる(警告音声は、2種類が当初から組み込まれている。別売で50パターンの音声ファイルも用意されている。音声データCDの価格は4,900円)。

柔軟性の高い警報通知機能

図2 無線LAN搭載モデル本体背面

図2 無線LAN搭載モデル本体背面

警報通知機能については、音声通知が追加された以外にも、大きな仕様変更がある。1つは監視対象とアクションの対応関係だ。これまでの3Gまでは、1つの監視対象項目に対して、1つのアクションが固定で設定する形だったが、4Gでは監視項目とアクションが自由に結び付けられるようになった。たとえば、A、B、Cという監視対象に対するアクションをすべて同じαにすることもできるし、Aはα、Bはβ、Cはγといったアクションの設定も可能になった。また、ノード監視のpingのエラー判定に、応答時間と回数を任意に設定できるようになった。これは、ネットワークのトラフィック増によってpingの応答時間が長くなるような場合でも、適切なエラー情報を設定できるようにするためだ。

さまざまな拡張の施された4Gであるが、今後は、USB接続で機能の拡張を図り、ビル管理、FAのプロトコルとの融合を目指すとしている。希望小売価格は、5灯タイプが8万9,800円(有線+無線LAN対応)(有線LANのみ8万3,800円)、3灯タイプ有線LAN+無線LAN対応7万9,800円、有線LAN対応7万3,800円、発売は、2011年12月1日よりとなっている。

なお、警子ちゃん3Gも継続して販売される。

信頼性を強化したエントリークラスの重複除外バックアップストレージ【Data Domain DD160】

EMCジャパン株式会社
http://japan.emc.com/

text:大川泰

EMCジャパンが2011年11月7日に発表した「Data Domain DD160」は、重複除外機能を搭載したバックアップストレージ「Data Domain」ファミリのエントリーモデルだ。従来製品の「Data Domain DD140」は、RAID 5までの対応、スペアを搭載しないディスク構成といったスペックだったが、DD160は、RAID 6に対応するとともにスペアディスクを搭載し、信頼性を強化した。同製品の発表を機にEMCジャパンは、国内のエントリーバックアップストレージ市場を積極的に開拓していく構えだ。

上位モデルと同等の機能を実装

DD160は、信頼性や機能の面ではData Domainファミリの上位モデルとほぼ同等である。上位モデルと異なるのは、バックアップ容量やデータ転送速度といった点だ(表1)。DD160は、500GBのHDDを最大12本搭載可能で、物理ディスクの実効容量は最大3.98TB、データ転送の速度は毎時667GBとなっている。さらに、オプションの「DD Boost」により、データ転送速度を毎時1.1TBまで向上させることができ る。このDD Boostは、「Symantec Backup Exec/NetBackup」や「EMC NetWorker」などの対応バックアップソフトウェアとData DomainのAPI連携を実現するソフトウェアである。重複除外処理をバックアップサーバ側でも実行可能とし、Data Domainに転送するデータ量を削減することで転送速度の向上を図る。

表1 Data Domainファミリ主要現行モデルの基本性能

表1 Data Domainファミリ主要現行モデルの基本性能

DD160のラインアップには、HDD 12本をフル搭載したモデルと、7本で実効容量1.6TBのモデルが用意されている。価格は、7本搭載モデルで100万円となっている。

また、DD160は、上位モデルではオプションとなるレプリケーション機能「Data Domain Replicator」がバンドルされている。低価格なエントリーモデルであるため、複数の拠点を持つ企業が各拠点にDD160を導入し、本社もしくはデータセンターに設置した上位モデルにバックアップデータを集約するという利用形態へのニーズが生まれると予想される。そうしたニーズに応えるために、DD160にはレプリケーション機能がバンドルされることになった。

Data Domainファミリの優位性

前述のように、DD160の機能はData Domainファミリの上位モデルとほぼ共通である。ここでは、次の3点に絞って同ファミリの特徴について解説する。

  • インライン型の重複除外
  • 確実なリカバリを可能にする信頼性
  • 効率的なレプリケーション

インライン型の重複除外

一般的に重複除外は、インライン型とポストプロセス型という2方式に分類される。Data Domainファミリが採用するのはインライン型で、この方式はデータがHDDに書き込まれる直前に重複除外を実行し、重複部分が無くなったデータだけを保管するというものだ。一方、ポストプロセス型は、いったん保管したデータに対して重複除外を実行する方式である。

ポストプロセス型では、重複除外処理の前に全データを保管する“作業領域”をHDD上に確保する必要があるが、インライン型ではデータ領域のすべてをバックアップに利用できるため、容量利用の効率性という面では、インライン型に分があると言える。

Data Domainファミリによる重複除外の効果を示したのが、図1である。この図は、毎週金曜日にフルバックアップ、ほかの曜日は増分バックアップを行うという例だ。最初の金曜日に実施した1TBのフルバックアップの中にも重複ブロックが存在するため重複除外の効果があり、これとData Domainファミリのデータ圧縮機能を合わせることで、実際に消費する物理容量をバックアップデータの論理容量の4分の1まで抑えている。その後、毎日の増分バックアップでも物理容量の消費を論理容量の10分の1に抑え、次の金曜日に実施する2回目のフルバックアップでは、50分の1以上の容量削減効果を発揮している。

図1 Data Domainファミリによる重複除外の効果の例

図1 Data Domainファミリによる重複除外の効果の例

ただし、重複除外の効果はバックアップするデータセットの種別で異なる。データベースやオフィス文書、仮想マシンファイルといった重複ブロックが多いデータセットには、特に大きな効果が期待できるであろう。

確実なリカバリを可能にする信頼性

信頼性の低さからテープストレージに見切りをつけて、ディスクバックアップに移行するユーザーは少なくないが、Data Domainファミリは、HDDの信頼性に依存することなく、データロスを防ぐ高信頼化機能によって確実なリカバリを可能にしている(図2)。

図2 リカバリの確実性を担保するData Domainファミリの高信頼化機能

図2 リカバリの確実性を担保するData Domainファミリの高信頼化機能

Data Domainファミリでは、データを書き込む際にチェックサムもHDD上に書き込み、バックアップが完了したら書き込まれたデータとチェックサムを比較することで、データが正しく書き込まれたかどうかを検証する。データの不整合が見つかった場合は、RAIDによって正しいデータに修正する。

ファイルシステムにも、信頼性を高める仕組みが備わっている。ファイルシステムは、どのデータがどこに保管されているかを示すメタデータを保持しているが、このメタデータと対応する実データをマッチングすることで、データの整合性を検証する。

前述のRAID 6やスペアディスクも、リカバリの確実性を高める機能だ。これらをエントリーモデルのDD160に実装したことも、信頼性を重視する姿勢の表れであろう。

効率的なレプリケーション

Data Domainファミリの内部に保管されている全データには、重複除外と圧縮が施されている。したがって、レプリケーション時に転送するデータも重複除外と圧縮で小容量化したデータとなる。このため、従来のレプリケーションに比べて、ネットワーク帯域の消費量を削減し、レプリケーション時間を短縮することができる。

また、インライン型の重複除外という特徴も、レプリケーションの効率化に一役買っている。ポストプロセス型では、データを保存してから重複除外を実行し、その後にレプリケーションを行うことになるが、インライン型では、バックアップ終了時に重複除外とレプリケーションも終了する。

多彩なレプリケーショントポロジーに対応できる点も大きな特徴である(図3)。例えば、双方向レプリケーションでは、データの送信と受信を同時に行いながら、両サイトで重複除外をリアルタイムに実行することになるが、こうした複雑な処理とデータの整合性を両立するのは簡単なことではない。実際に今日提供されている重複除外ストレージの中には、構成できるレプリケーショントポロジーに大きな制約があるものが存在する。これに対してData Domainファミリは、どのようなレプリケーショントポロジーでもサポートできることを標榜している。

図3 Data Domainファミリが対応可能なレプリケーショントポロジーの例

図3 Data Domainファミリが対応可能なレプリケーショントポロジーの例

このほか、レプリケーションのトラフィックにSSLによる暗号化を適用することが可能だ。重複除外の効果で帯域の狭い廉価な回線でもレプリケーションが可能になったが、廉価な回線ではセキュリティに不安が残ることもある。そうした場合でもトラフィックに暗号化を適用することで、レプリケーションデータのセキュリティを確保することができる。

クラウドサービスへの適用例が増加

最近、クラウドバックアップサービスの基盤として、Data Domainファミリを採用する事例が増えているという。ユーザーとクラウド事業者の両方にData Domainを設置し、ユーザーのバックアップデータをレプリケーション機能でクラウド事業者のData Domainに集約するサービスである。

新製品のDD160は、この種のサービスでユーザー側に設置するのにも適している。本体価格が低く抑えられているうえ、レプリケーション機能がバンドルされており、また、上位モデルと同様に複雑なレプリケーショントポロジーにも対応可能だからだ。

こうした特徴を備えるDD160は、重複除外ストレージの導入の敷居を下げるエントリーモデルという位置付けにとどまらず、Data Domainファミリの適用範囲を広げる戦略的な製品だと見なすことができる。

データ保存のアロケーションを最適化するハイブリッドストレージ【StorSimple】

マクニカネットワークス株式会社
http://www.macnica.net/storsimple/

text:木村慎治

増大するデータ量とクラウドストレージの問題点

写真1 StorSimple 5010外観 写真1 StorSimple 5010外観

爆発的に増え続けるデータ。継続的なストレージへの投資と運用工数の増加は企業にとって頭の痛い問題だ。そこでその解決方法の1つとして、最近とくに数多く発表されているのがクラウドストレージサービスである。物理的なハードウェアを持たず、容量に応じた課金方式により、運用工数とコストを低減するのが狙いだ。

しかし、クラウドストレージには多くの問題がある。パフォーマンスや、安全性、システム連携のための開発に関わる工数やコストなどだ。コンプライアンス上、データの保管場所が明確でなければ利用できないという企業もある。また、とくにパブリック型のクラウドストレージの場合にはWAN高速化が難しいため、パフォーマンスに問題が出ることも多い。アーカイブやバックアップ用途ならともかく、頻繁に利用するデータを保存するには適していないというのが実情だ。

SSD、HDD、クラウドストレージを組み合わせることで課題を解決

マクニカネットワークスが提供する「StorSimple」は、そうした課題を解決するハイブリッドストレージソリューションだ。米StorSimple,Inc.が開発したもので、米国ではすでに昨年から販売が開始されている。2Uのアプライアンスに、SSDとHDD(SAS)を搭載、さらにクラウドストレージサービスと連携するというのが基本的な構成となっている。

その特長は、ユーザーが意識することなく、自動的にデータを最適なストレージに移動する、つまり、データ保存アロケーションの最適化だ。その内容を簡単に説明すると、

  1. よく使うデータは重複排除してSSD
  2. あまり使わないデータは圧縮してHDD
  3. ほとんど使われないデータは暗号化してクラウドストレージ

といった具合に、使用頻度により、高速なSSDから、低速ながらも低コストなクラウドストレージまで、データの保存場所を自動的に最適化するというものだ。

例えば、最近のメールといったよく参照するデータはSSDに、コンプライアンスのために保存しなければならないような古いデータはクラウドストレージに、という保存場所の最適化をシームレスに行うのがStorSimpleの役割だ。

では、その仕組みを詳しく見ていこう。

iSCSIを通じてStorSimpleが受け取ったデータは、まずブロック化され、重複排除されたうえでSSDに保存される。85%のしきい値を超えるとデータは圧縮されてHDDに移動する。さらにHDDの使用率が85%を超えると、データを暗号化したうえでWANを経由してクラウドストレージに移動させる。

データの移動は、使用頻度や参照回数、経過時間、更新時間など、複数の要因からStorSimpleが自動的に重み付け(ティアリング)をして、保存するストレージ(ティア)を決定する。ティアリングは、よく使うデータを全データの10%程度と考え高速なSSDに、続くHDDには25%程度、それ以外をクラウドストレージに保存、という考えに基づき、優先度を決定してティアを選択する。よく使うデータはSSDに残り続け、逆にクラウドストレージに保存されたデータが参照された場合は再びSSDに展開されるといったアロケーションの最適化を自動的に行うのがStorSimpleのティアリングだ。ユーザーは保存されるストレージティアを意識する必要はないし、そもそもサーバー上のストレージビューでは、ティアが移動しても見え方は変わらない。

こうしたブロック単位でのティアリングやデータの重複排除、ティアの移動などについては、StorSimple,Inc.が開発した「Block Rank(ブロックランク)」と呼ばれる技術を使用しており、特許も取得している。

すべてのデータをSSDに保管するとなればコストが膨大になるし、逆にすべてをクラウドストレージとなると使い勝手の問題が発生する。よく使うデータをSSDに、ほとんど使われることのないアーカイブやバックアップのようなデータはクラウドストレージにというのは、コストや運用の面からも実に理にかなった考え方だ。

図1 StorSimpleのソリューションイメージ

図1 StorSimpleのソリューションイメージ
(出典:マクニカネットワークス)
図2 StorSimpleのアーキテクチャ

図2 StorSimpleのアーキテクチャ
(出典:マクニカネットワークス)

クラウドストレージは4サービスに対応
今後はプライベートクラウドも視野に

SSDへ保存される段階での重複排除はStorSimpleが独自開発した技術を使用している。データによって異なるが、排除率は25〜75%。さらにHDDへ移動するときには圧縮される。もちろんしきい値を越えれば自動的にクラウドストレージにデータは移動するので、容量不足を心配する必要はない。

対応するクラウドストレージは、もともと米国で対応していたAmazon Simple Storage Service (Amazon S3)、Windows Azure Storage Servicesに加え、日本ではニフティクラウドストレージサービスとIIJ GIOストレージサービスにも対応している。

HDDからクラウドストレージに移動する際にはデータがアプライアンスの外に出ることになるため、StorSimpleではデータを暗号化して安全性を担保する。暗号化方式はAES 256ビット。自動的に暗号化されたままクラウドストレージで保存されるのでデータの安全性は高く、StorSimpleに戻るときには自動的に復号化され展開される。ユーザーが鍵を意識する必要はない。

なお、クラウドストレージについては、「現段階でこれ以上対応サービスを増やすつもりはない」(マクニカネットワークス担当者)ということだが、プライベートクラウド内のストレージと連携することができるように対応していくとのこと。これが実現すると、物理サーバーで構築された基幹系システムと、プライベートクラウドを導入した情報系システムを連携させて、自社内でさらに安全で最適化されたストレージシステムを構築することも可能となるだろう。

二重、三重にデータの安全性に注力
DRの機能も提供

StorSimpleのSSDは高速なSLCタイプ。StorSimple 7010では6本、StorSimple 5010では4本の100GB SSDがRAID10構成で搭載され、冗長化によりさらに高い信頼性を獲得している。HDDはSASタイプ。StorSimple 7010では2TBが6本、StorSimple 5010には1TBが6本、同様にRAID10構成で搭載されている。クラウドストレージもサービスにより違いはあるもののデータのバックアップなどが提供されており、データの安全性は非常に高い設計となっている。さらに、StorSimpleはDR(ディザスタリカバリ)対策としても有効である。

「クラウドクローン」は、クラウドストレージ上にデータ全体のフルバックアップを保存する機能。メインサイトが災害などで被害受けた際には、代替サイトに別のStorSimpleを設置しコンフィグを投入すれば、クラウドストレージに保存されたクラウドクローンをマウントすることで、簡単にストレージをリストアすることができる。

このほかにも、データのスナップショットをローカルに保存する「ローカルスナップ」、クラウドストレージ上に保存する「クラウドスナップ」など、データの安全性については何重にも機能が提供されている。

震災以降ニーズの多くなっているBCP対策だが、新たに機器やサービスを導入するとなるとコストもかかり、また既存システムとの連携や、運用に手間が掛かることも多い。StorSimpleであれば、ストレージシステムを最適化しながら、DRの対策も同時に行うことができる。

表1 StorSimpleの仕様

表1 StorSimpleの仕様

※1 使用記憶容量はシステムに書き込まれたデータ量を示す。データは部分的に内蔵された記憶装置かクラウドストレージへ保存される可能性がある。保存されるデータ量はデータの種類・重複排除率により変わる。
※2 最大記憶容量を使用する場合は追加ライセンスが必要。
※3 重複排除率を4倍と想定。正確な値は異なる場合がある。

データセンターのファシリティとITインフラ両面の監視・管理【StruxureWare for Data Centers】

シュナイダーエレクトリック株式会社
http://www.apc.com/products/category.cfm?id=7

text:渡邉利和

シュナイダーエレクトリック(旧APCジャパン)は2011年10月11日、データセンター向けの統合インフラ管理ソフトウェア「StruxureWare for Data Centers」を発表した。従来InfraStruxure Management Softwareとして販売されていた製品の新バージョンという位置付けになるが、国内では同社のイベントの開催に伴って、製品名も変更され、バージョン7.0としてリリースされた。

データセンターの総合的な管理

同社が展開する“StruxureWare”は、以前からデータセンター・ファシリティの管理という、ITベンダー各社が提供する運用管理ソフトウェアが、カバーできない領域に対応していることでユニークな存在だったが、“for Data Centers”という名称からも窺えるとおり、今後はさまざまな分野をカバーすべく、対象領域を拡大する方向性を打ち出している。発表時点での紹介では、“for Grid”“for Industry”“for Buildings”といった名前が挙がっており、IT分野のみではなく、産業分野や電力などの特定業界向けの機能も盛り込まれていくことになりそうだ。

とはいえ、まずリリースされたStruxureWare for Data Centersは依然としてIT向けソリューションという位置付けで、IT分野でいう「データセンター」の監視・管理機能を統合したスイート製品となっている。基本的な特徴として同社が挙げているのは「高度でベンダーに依存しない管理ソフトウェア」「ITの複雑な物理的インフラの一元管理と分析が可能」「ビル、エンタープライズ、ネットワークの管理システムと連携し、品質の確保、コスト削減とエネルギー効率化、短期・長期の計画策定、データセンターの装置やリソースの割り当てに役立つソリューション」といった項目になる。また、今回の新バージョンで新たに打ち出されているのは「細分化されたグループ間の協働と継続性の実現」というものだ。これは、これまでは担当者が完全に異なっていた「ファシリティ側での電力監視」「ファシリティ側での冷却監視」「ITインフラ側の監視」「ITインフラのオペレーション」という要素を、ファシリティ側は“Data Center Facility Management(DCFM)”、IT側は“Data Center Infrastructure Management(DCIM)”という2つの機能に整理したうえで、さらにこの両者を統合する「データセンターの管理」をStruxureWare for Data Centersでカバーするということになる。

監視と管理の2つのスイート

StruxureWare for Data Centersの製品構成としては、大きく「監視」のための“StruxureWare for Data Center Monitoring Suite”と、「管理」のための“StruxureWare for Data Centers: Operations Suite 7.0”の2つのスイートに大別される。Monitoring Suiteに含まれるのは、“StruxureWare for Data Centers: Central 7.0”“同Power”“同Cooling”の3製品で、Operations Suiteには“StruxureWare Operations: Operations”をはじめとする10製品で構成される(表1)。名称変更と体系整理が同時に行われているので少々分かりにくい面があるが、Central 7.0は旧InfraStruxure Central、Powerは“PowerLogic ION Enterprise”Coolingは“CyberStation/VISTA”のそれぞれ後継という位置付けだ。また、Operations Suiteは旧InfraStruxure Operationsの後継であり、含まれる個々の製品もおおむね旧製品からの引き継ぎと考えてよい。つまり、製品としての大きなコンセプトはアップデートされ、名称や体系に対する整理も行われているが、従来製品と完全に隔絶したまったく新しい製品に切り替わったわけではなく、個々に見ていけば従来製品を着実に更新/機能強化したものとなっていることが分かる。

表1 StruxureWare for Data Centersの製品構成
表1 StruxureWare for Data Centersの製品構成

主な新機能

スイート全体で多数の製品を含んでおり、かつそれぞれが個別にさまざまな機能強化を行っているため、全体としての新機能や機能強化は膨大な数に上る。そのすべてを紹介することはできないので、ここでは主立った点のみを紹介する。

まず、StruxureWare Centralは、データセンターにおける物理インフラを統合管理するアプライアンスとして、従来InfraStruxureの中核製品として提供されてきた製品だ(図1)。今回のバージョンアップの大きな変更点の1つが、StruxureWare Central 7.0では新たにソフトウェアのみを仮想アプライアンスとして提供する形態が加ったことだ。この結果、高可用性を実現するためのクラスタリングなどが、従来以上に容易に実現できるなどのメリットが生じている。また、“バーチャルセンサ”機能が新たに実装され、複数のセンサをまとめて閾値を設定し、監視できるようになった。従来は、たとえばラック単位での電力消費量に対して閾値を設定するだけだったのが、電力系統を共用する、複数ラックの電力消費量の合計値に対して閾値を設定するようなことが可能になるということだ。これにより、あるラックの消費電力量が負荷変動などで上昇した場合でも、他のラックの消費電力量が低い場合には、即座に電力消費量を抑制しなくても問題ないといった、より高度で柔軟な運用が可能になる。

図1 StruxureWare Centralの機能
図1 StruxureWare Centralの機能
データセンターに設置されている物理インフラ機器を統合し、電力や冷却、温湿度などの環境情報、さらに監視カメラや電子錠から得られるセキュリティ情報を一元管理する。(出典:シュナイダーエレクトリック)

Operations Suiteの各製品でもさまざまな機能強化が行われている。Operationsもソフトウェア提供が開始され、クラスタ構成やロードバランシングといった大規模環境で有用な高可用性構成が利用可能になった。個々の製品の新機能では、Capacityに追加された“3D Airflow”機能が注目される。これは、サーバールームのエアフローを3Dで可視化/シミュレーションを行う機能で、より緻密なエアフロー制御が可能になる(画面1)。新規追加製品では、Insightがカスタムレポーティングツールとして提供される。運用に役立つさまざまなデータを多彩なテンプレートに落とし込んで見やすいレポートを作成するためのツールだ。また、Dashboardも同様のレポーティングツールといえるが、こちらはCEOなどの経営層、管理者向けに高度な抽象化を行い、必要な情報だけを組み合わせて、素早く提示するために役立つ。

画面1 3Dクーリングシミュレーション
画面1 3Dクーリングシミュレーション
(出典:シュナイダーエレクトリック)

DCIMの導入メリット

データセンターの運用監視に関しては、もともとは単体サーバーの稼働監視から始まり、ネットワークの普及に従って段階的に監視対象範囲を拡大してきたが、データセンターインフラに関しては、IT業界とは異なる業界が手掛ける分野として、IT運用管理ソフトウェアが直接監視対象として意識することはなかった。しかし、クラウド化するデータセンターのなかには、すでにファシリティまでを含めた全体最適化を行わない限り、効率化が実現できないレベルまで高度化してきているところも現れている。特に日本国内では電力使用量の削減が強く求められるようになってきており、コスト面だけでなく、社会的な責任という観点からもよりいっそうの高効率化を、運用管理負担を増大させることなく実現していく必要に迫られている。従来のようにファシリティとITインフラを分離したうえで、それぞれが独自に効率化を追求するという形から、一歩踏み出すことでよりいっそうの高効率化を実現するというコンセプトは、こうした現状を踏まえた最先端の取り組みといえるはずだが、一方でファシリティとIT機器を一体で管理できる体制を整備しなければ、効果を引き出しにくいという面もあるだろう。そのため、まずは自社データセンターでサービス提供を行うクラウド事業者や、データセンターを自社設備として抱える、大企業の社内データセンターから、こうしたソリューションの利用が始まることになると想定される。

VMwareに最適化された仮想化アプライアンス【HP VirtualSystem for VMware】

日本ヒューレット・パッカード株式会社
http://www.hp.com/jp/VirtualSystem

text:柏木恵子

写真1 HP VirtualSystem 写真1 HP VirtualSystem

日本ヒューレット・パッカードは、2011年9月27日に、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器を組み合わせたHP VirtualSystemの第一弾として、VMware vSphereに最適化されたHP VirtualSystem for VMwareを発表した。

HPは、2001年3月にワールドワイドでコンバージドインフラストラクチャというビジョンを発表している。コンバージドは複数の流れが収斂するという意味だが、コンバージドインフラストラクチャはサーバー、ストレージ、ソフトやサービスが1つに収斂するソリューションを提供することで、迅速なシステム構築や簡便な運用を実現しようというもの。HP VirtualSystemは、このコンバージドインフラストラクチャを実現するHP Converged System製品群の中の1つである。

コンバージドインフラストラクチャの目指すところは「INSTANT-ON ENTERPRISE」というビジョンであり、企業が環境の変化に迅速に対応するのを支援するために、ハードウェアのプラットフォームとOSに加えて、高度な管理機能やアプリケーションソフトまで含めた、パッケージ製品や推奨構成をラインアップしたものだ。

アプライアンスタイプの有用性

2009年に物理サーバーの出荷台数を仮想マシンの数が追い越したのを境に、仮想化提案時代から仮想化前提でシステム構築される時代に入っている。仮想化提案時代では、数台規模のサーバーを仮想化して統合するという使い方がほとんどだったが、仮想化前提時代のITインフラでは、数百台規模のサーバーを仮想化するというように、使い方が変化する。その結果、データセンターでは、マルチテナントで複数ユーザーに仮想サーバーリソースを提供するようなビジネスが盛んになってくると考えられる。

その時に問題になるのは、複数のテクノロジーや製品を組み合わせて適切に可動するのか、大容量のデータをどうハンドリングするか、ネットワークの複雑化とトラフィックの増大にどう対処するかである。さらに、物理サーバーのインターコネクトをいかに安定して繋げるかだけでなく、仮想サーバー間をいかにコントロールするかという新しい問題も出てくる。そうなると、複数の管理ツールがあると運用管理のコストの増大も問題になる。

そこで、サーバー、ストレージ、ネットワーク、運用管理をVMware環境に最適化した仮想化アプライアンスとして組み合わせたのが、HP VirtualSystem for VMwareである。HPが事前に検証したハードウェア構成とVMware環境を、HPが導入しサポートするため、ユーザーにとっては複雑性が解消される。また、シンプロビジョニングによる容量効率の向上や、vStorage APIと連携した高度なストレージ管理といった、ストレージの仮想化連携が可能。さらに10GbitのパフォーマンスとH3Cが開発したIRF(Intelligent Resilient Framework)によるスイッチのスタック技術やHPバーチャルコネクトによるI/O制御など、シンプルで高速なネットワークを実現する。

導入規模に合わせたラインアップ

HP VirtualSystemには、最大仮想マシン数によって、VS1、VS2、VS3の3つのラインアップがある。

HP VirtualSystem VS1 Solution for VMwareは、HP ProLiant DL380 G7とP4500 SANを組み合わせ、約400台までの仮想マシンの集約を想定した小〜中規模向けアプライアンスとなる。VS2は、HP Blade SystemとHP P4800 SANを組み合わせ、約1200台までの仮想マシンの集約を想定した中〜大規模向けアプライアンス。VS3は、HP Blade SystemとHP 3PAR Storage Systemを組み合わせ、約6000台までの仮想マシンの集約を想定した、大規模向けアプライアンスで、高い信頼性とパフォーマンスが求められる仮想環境やマルチテナント環境に適している。

いずれの共有ストレージも、vSphere API for Array Integration(VAAI)に対応しており、VMware vShieldに対応したIPS製品HP TippingPointをオプションで追加可能となっている。また、仮想化に対応した迅速な故障対応や、システム安定稼働のための24時間年中無休の保守サポートサービスを提供する。価格は、HP VirtualSystem VS1 Solution for VMwareが2600万円から、VS2が5900万円から、VS3は1億3700万円から。

キタテハ

... 以前、契約レンタルサーバーの Blog 機能を使い、近くのフィールドで撮影したモノは載せていたのですが、 その Blog 機能が終わってしまった様で、 [ ジャコウアゲハ ] の「 FISHEYE 飛翔撮影 の巻」が消えてしまいました。。。 ...

顧客同士を結ぶビジネス促進ツール【Equinix Marketplace(エクイニクス・ジャパン)】

エクイニクス・ジャパン 代表取締役社長 古田 敬氏
エクイニクス・ジャパン
代表取締役社長 古田 敬氏

MicrosoftやGoogleも利用者に名を連ねる、グローバルなデータセンター事業者Equinix(エクイニクス)は、顧客相互のビジネスを促進する無料サービスをスタートした。同じデータセンターを利用するビジネスパートナを、SNSのような仕組みで簡単に探せるというものだ。同社は顧客としてさまざまな分野の企業を4000社以上抱えており、利用者間の連携をサポートする機能も充実している。
取材・文:柏木恵子 写真:津島隆雄

ビジネスのプラットフォームを提供

Equinixは、1998年に設立されたグローバルなデータセンター事業者であり、世界99カ所にIBXと称するデータセンターがある。また、グローバルであると同時に、さまざまなネットワークから自由な選択が可能な「キャリア・ニュートラル」を標榜している。大きな特長は、コロケーション一本ということ。サーバーホスティングはもとより、マネージドサービスなども行っていない。

データセンターというと、サーバーを置くスペースを貸す不動産業というイメージもあるが、Equinixの場合はもともとのビジネスモデルがそれとは異なる。IBXという言葉は、当初は「Internet Business eXchange」の意味であった。つまり、サーバーを置く場所でありかつ広帯域のインターネット接続が可能なビジネスの場所を、企業に提供するということである。

その後、IBXの意味は「International Business eXchange」となる。要するに、さまざまな企業が世界各国で相互に結びつき、各社のビジネスを促進する場であるというのが、そもそものEquinixの立ち位置なのだ。複数企業が連携してビジネス生態系を作ることを欧米でよくエコシステムというが、「グローバルなエコシステムを促進するのが我々のビジネスの根幹」と、エクイニクス・ジャパンの代表取締役社長古田氏はいう。

Equinixは、IBXであるためにエクスチェンジとしての機能を随時拡充してきた。まずInternet Exchangeとしての機能としては、世界中のインターネット・トラフィックをピアリングし、スケールとパフォーマンスを提供するとともに、決済機能などの新機能を追加した。

さらに、Equinix Carrier Ethernet Exchangeとして、通信事業者のネットワークサービスの相互接続を中立的な立場で提供している。2010年から開始されている同サービスは、広域イーサネットサービスの1対多型E-NNIソリューションという位置づけで、異なるキャリア間のイーサネット網を簡単に接続できるだけでなく、相互にデータベースの参照などが可能になるため、利用通信事業者にとっては他の事業者との相互接続の大幅な時間短縮と利便性の向上が実現できる。また将来的には、IP-VPNへの対応も計画している。もちろんそれだけでなく、複数事業者が連携しやすいようにデータセンター構内の物理配線なども工夫している。

同じプラットフォームにビジネス相手がいる

顧客相互のビジネスを促進するツールとして、2011年10月24日に新たに発表したのが、Equinix Marketplaceである。これは、4000社を超えるEquinixの顧客企業を繋ぐ、無料のSNSサービスとイメージすればほぼ間違いない。

Equinixのデータセンター利用企業を、同社では、通信事業者、金融系、クラウド/IT系、コンテンツ配信系、エンタープライズという5つの分野に分けている。現状でも、たとえば株式や債券などの取引所と通信事業者の連携などでは、インターコネクションやエクスチェンジのサービスを利用してビジネスを行っている例が多くあるという。取引所ではコンピュータによる自動取引などを行うため、大量のトラフィックが発生し、コンマ何秒の遅延が莫大な損失に繋がることから、広帯域・低遅延で、高品質のネットワークへの接続が不可欠だからだ。また、企業とクラウド/IT事業者との連携なども、今後は増加するかもしれない。

このような各分野で4000社を超える顧客が存在するということは、相互にビジネス相手であり、あるいはビジネスパートナである可能性の高い企業が、同じEquinixのプラットフォームを利用していることを意味する(図1)。そこで、顧客各社がビジネス相手やパートナを簡単に探せるようにするという、顧客メリットを提供するのがこのサービスの目的だ。と同時に、Equinixにとってはコロケーション以外のエクスチェンジサービスの利用者が増えることにもなる。つまり、顧客相互のビジネス促進がEquinixのビジネスにおいても重要な部分を占めているというわけだ。


図1 Equinixのグローバルなアクセス拠点

図1 Equinixのグローバルなアクセス拠点
北米、南米、ヨーロッパ、アジアの4大陸、12カ国、37の市場で99のデータセンター、4,000以上の顧客、675のネットワークのアクセス拠点。

インターフェイスはSNS

自社の顧客同士を繋いで新たなビジネスを送出するためのコミュニティという議論は、これまでも各所でされているし、実際に機能している例もある。しかし、データセンター事業者では初めての試みといってよいだろう。そのツールとしてSNSを選択したのは「世間でSNSが定着し利用者も多いため」と古田社長はいう。今なら、SNSの形式を取ることが利用する側にとって最も使い勝手のよい、違和感のないものになっているという読みは、恐らく当たっているだろう。そして、99カ所で4000社以上の企業が利用しているというスケールだからこそ、この方法が有効であるともいえる。

Equinix Marketplaceのユーザーインターフェイスは、いわゆる普通のSNSと同じである。会社や担当者の紹介欄、メッセージ送信ボタンなどがあり(画面1)、作りは非常にシンプルだ。各企業がプロフィールを書き込んだ自社ページを作り、ビジネス相手を探したければサービスの種類やデータセンターのロケーションといった条件をクリックして検索すればいい。どこまでの情報をどの範囲に公開するかなどの選択が可能な点も、普通のSNSと同様である。

近年、データセンターの差別化として、ただの不動産業ではないプラスアルファの付加価値を持たせることが進められてきた。その手法の1つがマネージドサービスや、リソース単位で貸し出すIaaSのようなクラウドサービスである。Equinixはマネージドやホスティングへは向かわず、顧客間のビジネス促進へと舵を切った。その手法がこのEquinix Marketplaceというサービスということなのだろう。

画面1 Equinix Marketplaceのユーザーインターフェイス

画面1 Equinix Marketplaceのユーザーインターフェイス
図2 Who are your Neighbors in Platform Equinix?<br />

図2 Who are your Neighbors in Platform Equinix?

シスコシステムズのデータセンター戦略

コンピュータの性能向上やサーバー仮想化技術の普及により、単一プラットフォームにおけるサーバーの集積率、利用効率が劇的に向上している。現在、データセンターに望まれているのは、統合IT基盤にさまざまなアプリケーションが載り、ロケーションの異なるデータセンターをまたがって、どのような場所からでもどの場所のコンテンツやリソースへもアクセスできるということだ。このクラウド環境に向けたソリューションとして、シスコではユニファイドファブリックやユニファイドコンピューティングを発表しているが、10月26日にそのポートフォリオの拡充に関する発表を行った。その内容について概略を解説する。
文:柏木恵子

シスコの考えるデータセンターアーキテクチャ

企業の自社データセンター、クラウドサービスのインフラとなるデータセンター、あるいはビッグデータを扱う、HPCを行うなど、クラウドにはさまざまな種類がある。それぞれ求められる要件が異なり、ひとつのソリューションでどのようなクラウドにも対応するというのは不可能だ。そこでシスコでは、「データセンターファブリックアプローチ」を取っている。

ファブリックという言葉を使っているのは、織物(fabric)が縦糸と横糸を組み合わせてできているように、さまざまなコンポーネントを組み合わせてデータセンターのITを組み上げるというイメージだという。シスコは生地の種類や色、襟やボタンのデザインを自由に選べる老舗の仕立て屋で、特定分野の専門店とは違ってどのようなものでもお任せくださいということだ。老舗だから高いというイメージがあるかもしれないが、低消費電力のコンポーネントや光ファイバを収容するトランシーバに廉価なものもラインナップするなど、必要十分のデザインができるような品揃えがある。

このアプローチには、「ユニファイドファブリック」「ユニファイドネットワークサービス」「ユニファイドコンピューティング」という3つのコンポーネントがある。ユニファイドファブリックは、サーバーを接続するネットワークスイッチであるCisco Nexusファミリと、ストレージを接続するSANスイッチであるCisco MDSで構成される(図1)。Nexusには、ハイエンドのモジュラー型スイッチである7000シリーズを筆頭に、固定ポート型の5000、4000、3000、2000シリーズ、ハイパーバイザー上で動作するソフトスイッチである1000Vがある。ユニファイドファブリックはすべてCisco NX-OSで動作し、共通のアーキテクチャと管理フレームワークにより作られているため、データセンター全体で一貫した設計・管理が可能となる。

図1 シスコユニファイドファブリックのポートフォリオ(出典:シスコシステムズ)

図1 シスコユニファイドファブリックのポートフォリオ(出典:シスコシステムズ)

一方、ユニファイドネットワークサービスは、ソフトスイッチである1000Vと綿密に連携し、仮想マシンレベルでのさまざまなネットワークサービスを提供する製品群である。現在はセキュリティやWAN最適化のソリューションが提供されているが、今後サーバーロードバランサーなどの提供も予定している。ユニファイドコンピューティングはシスコの提供するサーバープラットフォームのCisco UCSであり、ユニファイドファブリック、ユニファイドネットワークサービスと綿密に連携して、強力かつ洗練された管理インターフェイスを提供する。

これら3本柱の膨大な製品ポーフォリオの中から適切な製品・テクノロジーを選んで組み合わせることで、個々のデータセンターの要件を満たす。さらに、ハードウェアベンダーやアプリケーションベンダーなどパートナー企業との協業により、さまざまなレイヤでのITインフラの価値向上を進めている。

Cisco Nexus 7000シリーズの第2世代機能

写真1 F2ファブリックモジュール 写真1 F2ファブリックモジュール

写真2 Nexus 7009 写真2 Nexus 7009

2011年10月26日に、シスコはユニファイドファブリックのコンポーネントであるNexus 7000シリーズの第2世代機能を発表した。大量のサーバーへの接続や大容量データの配信など、トラフィック、デバイス、接続数は増加しており、ネットワークスイッチにはより広帯域への対応や柔軟な拡張性が必要となっている。第2世代機能では収容可能な帯域が最大550Gとなり、従来(230G)の約2倍となった。

第2世代機能を利用するには、Nexus 7000シリーズにF2ファブリックモジュール(写真1)を搭載し、F2シリーズラインカードを使用する。F2シリーズラインカードは、1Gもしくは10GのSFP+ポートを48ポート搭載、L2/L3のワイヤーレートのフォワーディングを提供するほか、従来は1ポート当たり30〜40Wだった10GbEの消費電力が9Wと省電力になっている。

Nexus 7000シリーズとしては、すでに25RUサイズの7018、21RUサイズの7010が提供されているが、これらにF2モジュールを搭載することで第2世代機能を利用可能。また、第2世代対応の新製品として、14RUサイズ9スロットのNexus 7009(写真2)が発売された。大規模データセンター向け7000シリーズの中では比較的コンパクトなサイズながら、10GbEを336ポート搭載可能とこれまでよりも高いポート密度となっている。

また、第2世代機能では、シスコのデータセンターネットワークの中核技術であるFabricPathやFEX(ファブリックエクステンダー)にも対応している。さらに、今後FCoE(ファイバーチャネル・オーバー・イーサー)の対応も予定している。

柔軟性と拡張性を実現するFabricPath管理性を向上させるFEX

データセンター内のネットワークは、通常は3階層で構成されている。まず各サーバーのネットワークケーブルをまとめるアクセススイッチ、これはよくラックの一番上に設置されている。この、アクセススイッチでまとめたトラフィックをさらにまとめるアグリゲーションスイッチ、元締めとなるコアスイッチである。1000台のサーバーがあったとして、1000本のネットワークケーブルをすべてひとつの巨大スイッチに挿すとネットワークケーブルが大量に這い回ることになって管理しにくい。また、セグメント分けしてアクセスコントロールするなどセキュリティ上の観点からも、段階的にまとめるのが有効というわけだ。 複数のネットワーク機器が接続されたLAN環境ができあがるが、ネットワークは複数のL2ネットワークを併存させたうえで、L3で接続するという手法がとられてきた。しかし近年、物理・仮想サーバーの混在環境への対応、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、HFT/HPCなど、新たな要求に対応できる柔軟なアーキテクチャがデータセンターに求められている。

それを実現するにはL2ドメインの規模を拡大するというのがもっとも簡単だ。スイッチングによりデバイスの移動が可能となり、サーバーに対して透過的にインフラの変更を行えるからだ。

ところが、STPベースのL2は設定こそ容易なものの、ドメインが大きくなると、利用効率が下がり、様々なパフォーマンスの問題が発生する。さらに一部の障害がL2ドメイン全体に影響を及ぼしてしまう恐れがある。堅牢でスケーラブルなL3に対して、従来のL2は堅牢性や拡張性、運用性に大きな問題があり、また、L3はL2が必要なアプリケーションに対してサービスを提供できない。そのため、L2ドメインはある程度のサイズに抑えてそれをL3でまとめるというのが従来のアーキテクチャだった。

これらの課題を解決するために開発されたのが、L3の安定性とスケールをL2に実現するFabricPathだ。L2で通信していた部分のイーサネットフレームにFabricPathのヘッダーをつけてカプセル化し、ルーティングを行う。増設の際にも複雑な設定変更は不要で、スパニングツリーを設定する必要がないので性能をフルに活用できる。 FabricPathはネットワークのコア側に関する技術だが、サーバー側に関する重要な技術がFEXである。これは、複数のラックの各アクセススイッチをまとめて、仮想的にひとつの大きなスイッチのように扱う機能だ。7000シリーズや5000シリーズを親スイッチとして、各ラックの2000シリーズに対してネットワークの設定を行う。それに加えて、2000シリーズに接続されたサーバーの仮想NICや個々の仮想マシンまでを親スイッチから一括管理できるようになった。

サーバー仮想化によってサーバー管理とネットワーク管理の境界があいまいになり、アクセスコントロールやネットワークQoSに関する問題が発生していた。FEXを使うことで、それを回避できるようになる。この機能はIEEE 802.1BRとして標準化が進められており、将来的には他社のサーバーでも同様の管理ができるようになる予定だ。

図2 FabricPathの概念図と設定コマンド。

図2 FabricPathの概念図と設定コマンド。「このスイッチのこのインターフェイスがFablicPathネットワークに参加する」という設定さえ行えば、あとはスイッチが自動的にグループに追加して通信を開始する(出典:シスコシステムズ)

Nexus 5500にFabricPath機能を追加 3000シリーズにラインナップ追加

及川尚氏 写真3 シスコシステムズ合同会社 データセンタバーチャライゼーション事業 データセンタ スイッチング プロダクトマネージャ 及川尚氏

FabricPathは、従来はNexus 7000シリーズでのみ使用可能な機能だったが、今回のポートフォリオ拡充でNexus 5500でも使用可能になった。7000同士や5000同士だけでなく7000と5000の接続も可能なため、ネットワークの大きさによって選択可能であり、成長に合わせて自由に拡張できる。

ちなみに、Nexus 2000シリーズは5000シリーズと組み合わせて使うことが前提となっており、単体では使用できない。そこまでのポート数や帯域が必要でないという場合には、Nexus 3000シリーズを使用することになる。低遅延、大容量バッファのスイッチングプラットフォームとして3064が提供されているが、48ポートの3048、16ポートの3016が新たなラインナップとして追加された。また、ブレードサーバーを使っている場合は、ブレードシャーシに挿すタイプのNexus 4000シリーズを使用する。

Nexusファミリだけでかなりの種類の製品がラインナップされているが、これは「さまざまなデータセンターの要求に、多様な製品を組み合わせることで応えるため」(シスコ データセンタバーチャライゼーション事業 データセンタスイッチング プロダクトマネージャ 及川尚氏)である。そのためにも、「分厚いポートフォリオを備え、それをさらに拡充していく」(同氏)という。

クラウド管理ツールCIACが各サービスレイヤを包括

データセンターファブリックアプローチによって構築されたデータセンターの管理運用を行うツールについて触れておこう。

ITインフラの進化の過程は、おおむね「統合化」→「仮想化」→「自動化」→「ユーティリティ」→「ビジネスプロセス」という道筋をたどる。仮想化によって場所から解放され、自動化によってプロビジョニングから解放され、最終的にはハイブリッドクラウドによるビジネスプロセスからの解放が終着点だとするのがシスコの考え方だ。

シスコは多くの企業買収を行ってきたためデータセンターがたくさんあり、それを統合し仮想化していくというプロジェクトが、数年前から進んでいた。現在シスコにはリソースプール化された統合ITインフラがあり、各部門で物理サーバーを調達したり所有することはない。そのシスコのIT部門が実際に使っているツールが、CIAC(Cisco Intelligent Automation for Cloud)である。このため、CIACは製品単体ではなく、経験値やノウハウなども同時に提供することができる。

CIACは、IaaS/PaaS/SaaSを実現するためのエンドユーザー向けセルフポータル、プロビジョニングで使用するサービスカタログの設定・編集のほか、バックアップなど日々の運用の自動化、トラブル対応でのログ収集の自動化などの機能を提供する。また、外部ツールとの連携用APIが提供され、既存の運用環境との連結も可能だ。

図3 ファブリックエクステンダーの進化。

図3 ファブリックエクステンダーの進化。親スイッチからネットワークのポリシー設定可能な範囲が、ラックスイッチのポートレベル、サーバーの仮想NICレベル、仮想マシンレベルへと拡大(出典:シスコシステムズ)
画面1 CIAC Cisco Cloud Portal画面

画面1 CIAC Cisco Cloud Portal画面
画面2 CIAC Cisco Tidal Enterprise Orchestrator画面

画面2 CIAC Cisco Tidal Enterprise Orchestrator画面

コンサルティングをライフサイクルで提供

CIACはクラウドを実現するためのソフトウェアとして提供されるが、ハードウェアと管理ツール、導入コンサルティングやアドバンスドサービスをパッケージ化したソリューションとしても提供する。アドバンスドサービスはいわゆるコンサルティングだが、ITインフラの複雑化や技術革新の速さから需要が高まっており近年特に伸びている事業で、シスコではこれをライフサイクルで提供するとしている。

仮想化からクラウドに至るデータセンターの進化の度合いは各社各様であり、シスコの技術者がネットワークやサーバーの詳細なアセスメントを行い、問題点をあぶり出したうえで改善プランを作るのが基本だ。また、昨今はデータセンターに関する予算の獲得にも説得力のある裏付けデータが必要となることが多く、ワールドワイドでの分析やシスコの豊富な事例ベースのデータなどにより、投資計画や実行計画を作るようなコンサルティングも行っているという。その他、直近では震災によってニーズの高まったDRへの迅速な対応もあった。

アドバンスドサービスは、スイッチングなどITの基本的なテクノロジー、データセンターファブリックアプローチによる柔軟性の高いシステム、自動化やクラウドなどによるソリューションに対して付加価値を加えるものと位置づけられている。

図4 Cisco Intelligent Automation for Cloud製品ポートフォリオ

図4 Cisco Intelligent Automation for Cloud製品ポートフォリオ。IaaS/PaaS/SaaSすべてのサービスレイヤとそのインフラストラクチャをカバーし、資源活用の無駄を削減したリソース循環型インフラストラクチャを実現する(出典:シスコシステムズ)

関電システムソリューションズ 大阪都市型第3データセンター

関電システムソリューションズは、2011年12月26日に大阪都心部に第3データセンターをオープンする。その特徴として、都心部の利便性、手厚い防災対策、省エネへの積極的な取り組み、高いセキュリティ・信頼性を備えた、総合ITサービスを実現するデータセンターとして誕生する。
文:廣澤 純 写真:津島隆雄

関電システムソリューションズ(以下KS Solutions)は、2004年に関電情報システム(KIS)と関西テレコムテクノロジー(KTT)の合併により発足したばかりの会社だが、KISの元となった関西総合電子計算センターは、1967年に尼崎市で創業されており、約45年にわたって関西電力の基幹系業務を支えてきた実績を持つ。KS Solutionsのデータセンターを利用する企業には、セキュリティや防災対策など、システムの安定稼働を重視する企業が多く、金融系をはじめ、保険、通信事業社などが名前を連ねる。KS Solutionsも単にデータセンターのコロケーションサービスを提供するだけでなく、コンサルティング、システム開発、インフラ構築、運用保守まで幅広いサービスを提供し、データセンターはそうしたサービスを展開する受け皿となっている。

大阪駅近傍の好立地

写真1 関電システムソリューションズの第3データセンター。地上9階建、大阪都心部の立地条件の良さ、最新の省エネファシリティ設備、豊富なITサービス、付帯設備の充実が特徴。屋上壁面に太陽光発電パネルを設置。
写真1 関電システムソリューションズの第3データセンター。地上9階建、大阪都心部の立地条件の良さ、最新の省エネファシリティ設備、豊富なITサービス、付帯設備の充実が特徴。屋上壁面に太陽光発電パネルを設置。

関電システムソリューションズ「第3データセンター」は、JR大阪/新大阪から車で10分、地下鉄最寄り駅から徒歩5分という、交通の便のよい場所に建設している。大阪の都心部に建設されたデータセンター専用の建物としては、おそらく最大規模であるとともに、最新技術を取り入れたデータセンターである(写真1、写真2)。地上9階建てのSRC造、免震設計、ビルの延べ床面積は約1万2000m²あり、1階はロビー・エントランス、2・3・4階は電源設備、5階〜9階にサーバールーム(4000m²、ラック数にすると約1300ラックが収容可能)が配置され、屋上には冷却塔(クーリングタワー)、冷凍機(チラー)などが設置されている(図1)。

写真2 データセンターエントランスとフラッパーゲート 1階はロビー、エントランス、プレゼンテーションルーム、喫煙室などの施設が置かれ、入館するとすぐにフラッパーゲートがあり、ここでも人の移動が管理されている。

写真2 データセンターエントランスとフラッパーゲート 1階はロビー、エントランス、プレゼンテーションルーム、喫煙室などの施設が置かれ、入館するとすぐにフラッパーゲートがあり、ここでも人の移動が管理されている。
図1 ビル内設備 1階は、エントランスとロビー、2階・3階・4階は電源設備、5階から9階がサーバールームとしておよそ4000m²(1300ラック)が利用できる。

図1 ビル内設備 1階は、エントランスとロビー、2階・3階・4階は電源設備、5階から9階がサーバールームとしておよそ4000m²(1300ラック)が利用できる。

受電設備の安定性は最重要

写真3 非常用発電装置 重油を燃料とするガスタービン。2500kVの出力のものが5基設置されており、48時間連続運転可能な燃料が地下に備蓄されている。

受電方式は、特別高圧受電22kV、スポットネットワーク方式だ。2回線受電の場合は、1回線に障害が発生した場合、切り替えるまでいったん停電するが、スポットネットワークは3回線受電となるため、1回線が停電しても、残り2回線で受電可能なので、停電することなく切り替えできる分、停電のリスクは少ない。

非常用発電機は、2500kVAのガスタービン5基が装備され(写真3)、災害により万一停電が起こっても、48時間継続運転の燃料が備蓄されている(JDCCの基準では、Tier4クラスの基準を満たしている)。

また、無停電電源装置は、(N+1)×2という高い冗長性を確保するなど、電力関係のいずれの設備状況を見ても冗長化のレベルは高く、データセンターにおける電力供給が、最重要課題であるとの認識の上に、可用性の高い電気設備が成り立っているといえるだろう。

高い信頼性を維持する防災対策

第3データセンターは、大阪都心部の大阪駅から車で10分ほどの場所であるから、大阪湾からは10km以上離れているため、津波の被害は考えられない。しかし、近くに河川が流れているため、河川の氾濫による水害は想定に入れている。国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所が2002年に発表している「淀川・宇治川・木津川・桂川における浸水想定区域図」によると、大阪駅近辺は、1m〜2mの浸水が想定されている(この浸水想定のシミュレーションは、昭和28年9月(名張川流域は昭和34年9月)洪水時の2日間総雨量の2倍を想定している)。そのため、電気設備は2階以上に、サーバールームは5階以上に配置している。1フロアの階高は5mあるため、万一4mぐらい浸水したとしても、データセンターの運用に支障をきたすことはないという。

地震対策には、建物自体が免震システムを採用しており、ビルが受ける地震の横揺れを積層ゴム支承とダンパーが吸収する(写真4)。耐震構造の建物では、建物の壁や柱が揺れのエネルギーを吸収するが、高層部分のほうが揺れは大きくなる。ビル内のデータセンターでは、高層部にサーバー機器が置かれているため、耐震対策だけでは顧客のIT機器に被害が及ぶ可能性が大きい。しかし、免震建築はある程度コストがかさむため、どのデータセンターでも対応しているというものでもないが、KS Solutionsでは顧客のIT資産を保護する施策として取り入れている。このビルでは、阪神・淡路大震災と同等レベルの地震に対しても、IT機器に被害が及ぶことはないという。

写真4 ビル免震システム 建物自体が免震構造で、積層ゴム支承、剛材ダンパーとオイルダンパーで横揺れに大対して高い免震性能を実現している。

火災への対応も、火災発生以前の超高感度の予兆検知システムが設置され(写真5)、火災発生時の消火システムにも、IT機器に影響を及ぼさない窒素ガスによる消火装置が設置されている。

写真5 超高感度予兆検知システム(超好感度煙感知器)
写真に写っているのは、監視用の火災早期検知監視盤。予兆検知装置自体は、空気が循環する経路に設置される。

省エネ施策の充実した冷却設備

写真6 共連れ防止システム サーバールームの入口では、ICカード認証が行われ、ドアの内側で生体認証を行うが、無線センサで共連れが検知されると、生体認証が無効になる。

サーバールーム入口は、一見すると入室するのになんの制約もないように見える。通常サーバールームの入口といえば、共連れ防止のためにコード・生体認証を伴うサークルゲートが用いられることが多いが、ここの入口は、IDカードと生体認証でチェックし、共連れは無線センサで検知する方式をとっている(写真6)。共連れが検知されると生体認証が無効になり、入室できなくなるという仕組みだ。サークルゲートが悪いというわけではないが、共連れのチェック1つにしても、進歩しているものだと妙に感心させられた。

サーバールームの床耐荷重は、1000kg/m²、ラック耐荷重800kgと、IT機器を高密度でラックに搭載しても問題ないレベルだ。 サーバールームの冷却方式は、一般的な二重床、床下吹上げ・天井吸込み方式と、一般的な空調方式を採用している。1フロアの階高は5000mm、床から天井までが2800mm、床下高が600mmと、空調効率を意識したサイズだが、特殊な設計というわけではない。ただ、省エネルギー対策に関しては、いくつか考慮されている点がある。まず、ラックの配置は冷気の吹き出すコールドアイルと排熱側のホットアイルに分けられ、さらにホットアイル側が排熱を漏らさないように透明な壁で囲まれている。暖気は拡散せずに天井に直接排気されるため、この措置でかなり冷却効率を高めている(図2)。

図2 キャッピング方式 ラック背面側の天井から床にかけて壁を設けて、サーバールームの排熱の拡散、滞留を防ぐことで、空調効率を向上する。

省エネ対策のもう1つは、フリークーリングの採用だ。サーバールームの排熱は、天井から空調機に送られて冷水によって冷やされる。熱交換で暖められた冷水は、夏期には冷凍機(チラー)で冷やす必要があるが、外気温度が低い時期は、冷却塔(クーリングタワー)で、冷却水と外気を直接接触させて冷やしている(図3)。一部の冷却水が蒸発することで、残りの冷却水を冷やし、冷却水は熱交換器で冷水を冷やし再びサーバールーム脇の空調機に戻されて空気を冷やし(写真7)、冷やされた空気は床下を経由してコールドアイルのラック前面に吹き出される。古代から知られる冷却原理だが、十分効果的だ(1%の水の蒸発によって残りの水の温度は、約6℃下がる)。また、コールドアイルの床パネルの一部には、床下からの空気の吹上げを補助するファンが取り付けられている(写真8)。これは、空調機の吹出し口から近い場所は、風速が大きくなるため、吹出し圧力が小さくなることによる熱だまりを防ぐための措置だ。

図3 フリークーリング 外気温度の低い冬期には、冷却塔で空調冷却に使われる冷水を製造。冷凍機をほとんど使用せずに冷水を作ることができるため、大きな省エネルギー効果が期待できる。

写真7 冷却塔 内部は冷水を貯めるようになっており、上部のファンで冷却効率を高めている。側面部で冷却水が外気に直接触れている。

写真8 ファン付き床パネル 熱だまりの防止策として、空調機の吹出し口から近い部分では、風量を補うためにファン付きのパネルが取り付けられている。

第3データセンターの冷却設備にはほかにも特徴的な点がある。1つは冷凍機がモジュール化されており、サーバールームの熱負荷に応じて稼働する冷凍機の数を増減できることだ(写真9)。その結果、冷凍機の稼働効率を高め、結果としてエネルギーコストの削減となる。

写真9 冷凍機 全部で44モジュール(2台はバッファ)、全体を4つに区分し、運転制御を行っている。20℃の冷却水を13℃に冷やして空調機に送っている。

ダイナミックな冷凍機の運転制御は、サーバールームの温度監視システムとビルの中央監視システムとの連携によって行われる(写真10)。サーバールームのハウジング用のラックには、温度のセンサを設置し、分電盤には電力の計測機器を設置している(AnyWireを使用)。ラックで計測された温度が閾値を超えると、温度監視システムから中央監視システムに通知され、中央管理システムから温度設定値を変更するよう、空調機にフィードバックし、装置の運転を自動制御するという方式がとられている。

写真10 監視カメラだけでなく、各種設備のセンサ情報をシステム監視・制御。万が一の際も24時間有人監視で迅速に対応する。

もう1つの特徴は、部分的な外気冷房の導入だ。ビル内の冷却には、ビル空間の利用目的に合わせて3種類の方法がとられている。共有スペースは、標準的なパッケージ空調、先に述べたように、サーバールームはフリークーリングを組み合わせた冷凍機による空冷方式、そして電気室は外気冷房によって冷却する。外気冷房は、外気のみ、混合、空調機のみの3モードで自動制御される。大阪の気象データを基に、シミュレーションを行っているが、これから試運転を行い、データを蓄積することで、運転の見直しなどの調整も図るという。また、サーバールームでの外気冷房の適用も検討されたそうだが、大気内の塵埃がサーバーに与える影響が未知数であるため、今回は見送ったのだそうだ。

第3データセンターの想定PUEは、1.4に近い値だそうだが、都市型・高可用性・高信頼性を標榜するデータセンターにおいて、高い冗長性を確保しながら、この数字を実現しているとすれば、非常に高効率なことを意味する。無停電電源装置や空調機には、効率やCOPの高い製品が選ばれていることも影響しているのだろうが、冷却設備の工夫によるところも、大きく影響しているのではないだろうか。

第三者機関による適合証明

こうした設備基準、セキュリティ、防災対策への取り組みの、信頼性維持・向上を図るため、KS Solurionsでは第三者機関であるJQA(日本品質保証機構)による情報システムの安全対策検査を実施している。JQAではFISC(金融情報システムセンター)の「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準」とJEITA(日本電子技術産業協会)の「情報システムの設備環境基準」などの安全対策基準に照らし合わせた審査を行う。

FISCの安全対策基準では、電気系統の冗長化や床の防水処理のみならず、通常利用者が目にすることのない部分まで、厳密な基準が設定されており、対応するのは決して簡単なことではない。それでも、金融系企業の顧客が要望する場合の対応を配慮し、しかも信頼性を高めるために第三者の審査を受けるなど、手間とコストのかかることを地道に積み重ねられるのは、長年の基幹システムを扱ってきた、経験の成せる業といえるのかもしれない。

表1 関電システムソリューションズの第3データセンター設備概要
所在地 大阪府大阪市
建物 構造:SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート):免震設計
階数:9階建
延床面積: 1万1534m² (約1300ラック)
床耐荷重:1000kg/m²
セキュリティ 24時間有人セキュリティチェック 生体認証+非接触ICカード+共連れ防止セキュリティゲート
監視カメラによる常時監視、動き検知機能搭載
電源 特別高圧22kVスポットネットワーク方式
無停電電源装置 CVCF:並列冗長方式(N+1)
非常用発電機:重油式 N+1構成、48時間連続運転可能な燃料貯蓄
空調 床下吹き出し方式、空冷中央熱源方式+フリークーリング+外気冷房 N+1方式による冗長運転
ネットワーク キャリアニュートラル
付帯設備 プレゼンテーションルーム、レンタルオフィス、データ保管用耐火倉庫、リモート操作用ルーム、喫煙室
消火設備 コンピュータに考慮したN2消火設備、超高感度煙検知器
グリーンIT設備 太陽光発電、外気冷房、LED照明、人感知センサによる点灯制御、高COP熱源機、高効率CVCF採用、空調機稼働台数・能力制御システム、etc

KS SolutionsのITサービス

本文でも触れているが、KS Solutionsはおよそ45年におよぶ関西電力の基幹系業務システムを支えてきた実績を持ち、金融機関の求める、FISCの厳しいITシステムの運用基準をクリアできる体制を持っている。単に優れたファシリティを背景としてコロケーションのサービスを売るだけでなく、マネージドサービス、システムインテグレーション、インフラ構築といった、企業が求める多様なITニーズに対応可能だ。

そのなかでも、近年特に実績が積み上がってきたのが、2009年末から始まったクラウドサービスだ。KS Solutionsのクラウドサービスは、VMware vSphereを仮想化プラットフォームとして使い、マルチテナント型のクラウドサービスを提供する。パブリッククラウドというより、プライベートクラウドをアウトソースするという形態だ。一般のホスティング事業者のサービスと異なり、企業のプライベートクラウドとして、独自のネットワーク環境への要望に対応、オンプレミスの環境や物理サーバーのホスティングサービスとクラウドサービスとの連携など、柔軟なシステム構築に対応できるという。

こうしたクラウドビジネスを推進してきた実績をベースに、現在関西電力グループ向けのクラウドシステムの構築が進められている。グループクラウドを構築する目的は、関西電力の事業に関わる関連会社のデータ集約や事業継続への対応が主目的であるという。個々の企業にデータが分散していること自体がリスクであるため、データセンターに分散したデータを集約することで、セキュリティを確保する。また、グループ会社のなかでも、自力でITシステムが運用できる規模の会社ばかりではなく、総務部や企画部がITインフラの面倒を見ているという企業もあるため、一貫したポリシーの元に運用管理を行うとともに、クラウド化によってコストを下げることも、目的の1つであるという。また、運用保守を集約するばかりでなく、ヘルプデスクもKS Solutionsに集約する方針だ。当面、サービスレベルの水準や課金システムなど課題もあり、まだ検討が必要な部分もあるが、最終的には、30社、数千人ぐらいをまかなう規模のグループクラウドになる予定だそうだ。

こうしたクラウドサービスや仮想化の普及に伴い、これまでサイロ化されていたファシリティとITインフラ構築、運用オペレーションの連携を今まで以上に強化させる必要も急速に高まってきた。インフラ部隊の運用保守やSEと運用オペレーションの部隊をコラボして、24時間365日のシームレスでより柔軟なオンサイト対応ができるマネージドオペレーションというサービス領域を確立するための取り組みを進めている。

データセンターが直面する次世代ITインフラと来るべきエネルギー効率化の要請

2011年10月11日に都内ホテルで開催されたシュナイダーエレクトリックの「Data Center Solutions Forum 2011」では、セッションの締めくくりとして「データセンターが直面する次世代ITインフラと来るべきエネルギー効率化の要請」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストとして登壇したのは、エクイニクス・ジャパンの古田敬氏、さくらインターネットの田中邦裕氏、富士通の北中猛詞氏、シュナイダーエレクトリックの佐志田伸夫氏の四人である。ここでは、主にこの夏の電力使用制限に対する取り組みについての話題を紹介する。

ファシリテータ:本誌編集長 土屋信明  文 柏木恵子  写真 津島隆雄

震災対応、すぐできる取り組み

——3.11の震災と福島原発のトラブルにより、この夏は石油危機以来37年ぶりという電力使用制限の措置がとられました。幸いにしてデータセンターは規制緩和の対象となりましたが、みなさんそれぞれ影響があったのではないでしょうか。

富士通株式会社 アウトソーシング事業本部 ファシリティマネジメント 統括部 統括部長 北中猛詞氏
富士通株式会社
アウトソーシング事業本部
ファシリティマネジメント
統括部 統括部長
北中猛詞氏

北中●東京は計画停電がありませんでしたが、実は館林では5回経験しています。お客様から発電用燃料の調達状況をご心配される質問なども多々ありましたが、結果的には7〜9月の制限期間を無事に乗り越えました。

そのなかで省エネの効果が高かったのは、空調機をいかに止めるかというところです。我々の基本的な考え方として、お客様のシステムを絶対に止めない、データセンターだけでなくお客様サポートの拠点も含めて守るという前提で施策を作っています。実際のところ、データセンターで省エネというのは非常に難しいですね。一般の事務所ですと空調・照明を止める、エレベータの間引き運転をするといったことがよく実施されていますが、データセンターでは空調設備を含めた冷熱源設備をいかに電気を使わずに運転するかが、一番のポイントだと思います。

節電施策としていくつか行いました(図1)が、一番効果があったのはサーバー室用の空調機器を止める、または冷熱源設備の運用を変更するというものです。冷熱源設備というのは、当社のセンターは水冷セントラル方式で冷水を作る冷凍機を電気で運転していましたが、それを油で運転するものに切り替えました。一番大きかったのは、外調機設備の運転変更です。外調機はサーバー室に新鮮な空気を入れたり、室内の加湿に使われたりしています。この外調機を止めることによって、かなり電力を削減できました。

図1 富士通館林データセンターの節電施策(出典:富士通)

図1 富士通館林データセンターの節電施策(出典:富士通)

室外機設備の環境改善というのは、葦簀(よしず)をかけたり、打ち水をして冷やしたりといった地道な努力です。また、当社の設備は完全二重化をしていますので、お客様のシステムに影響のないものを止めました。具体的にいうと、空調機の冗長部分は止められます。また、電源設備のうち、末端のサーバールームまでいく間にいろいろトランス設備があります。トランスを入れると使わなくても負荷が乗っているので、そういったトランスの一部を停止するといったこともしました。まさに、乾いた雑巾を絞るような作業を積み重ねて、だいたい5%弱の削減ができています。当社のセンターは事務所のスペースはあまりありませんので、純粋にデータセンターのみでの節電ということです。

——館林のデータセンターはクラウドの基盤に使われていたり、可用性の高さが要求されたりと、できることには制限があると思いますが、冗長化設備の停止や空調の停止は、お客様の理解は得られましたか。

北中●基本的にはお客様のシステムは止めないという前提ですので、電源や空調については数値から判断して大丈夫だろうというところまでやりました。とはいっても、空調機を止めるのは温度上昇というリスクが伴います。そこで役立ったのは、これまでやってきた見える化と省エネの運転システムです。館林では、1ラック単位で温度を監視できるようになっています。温度が高くなるところは事前に風がよく通るようにするといった施策を打ち、ピンポイントで温度の上がっているところはどこか確認しながら、空調の停止や設定温度を上げるということもやります。床下温度も18℃から23℃まで段階的に上げて、これは今も継続して23℃で運転しています。

——外調機を止めると外気が入らなくなるので、二酸化炭素の濃度が問題になりますね。

北中●CO2濃度の基準は1000ppmなので、それを超えないように昼間止めて夜間動かすといったことをします。温度が高い昼間の時間帯に外調機を止めて、極力電力量を下げました。

——最も削減効果が高いのは空調機器、冷熱源設備あたりということですね。佐志田さん、一般的にみてこれはどうですか。

シュナイダーエレクトリック株式会社 取締役 佐志田伸夫氏
シュナイダーエレクトリック
株式会社
取締役
佐志田伸夫氏

佐志田●外から空気を取り入れると、熱い空気を取り入れてそれを冷やすことになりますので、その動きを止めるのは二重のメリットがあります。外調機のファンを回すエネルギーと入ってくる熱い空気を冷やすエネルギーがいらなくなります。一般的に、データセンターとして作られた新しいビルはそのように考えられています。オフィスビルでも、省エネのために外気温を見て外調機の取り入れ量を制御するということは一部でやられています。

しかし、古い建物や、当初はデータセンター内で人がいろいろな業務をすると想定して設計されている場合は、CO2濃度が上がらないようになっています。その場合、ほとんど人がいないデータセンターなら、コンピュータは呼吸をしませんから、CO2濃度に神経質になる必要はありません。富士通さんのように見直すのは適切な方法でしょう。

——これまであまり紹介していませんが、外調機は試してみる価値がありそうですね。都内のデータセンターの省エネ対策として、さくらインターネットの対策事例をお聞きしたいのですが。

さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏
さくらインターネット
代表取締役社長
田中邦裕氏

田中●今回の震災に対応するための省エネといいますと、すぐにできることということになりますね。ひとつは、そもそもサーバーを止めるということです。サーバーはなかなか止められないということですが、たとえば検証中や実験中のサーバー、冗長化している自社のメールサーバーを止めてしまうとか、お客様に影響のない範囲でサーバーを止めるということをまずやりました。

もう一点は、東京以外にサーバーを持っていく、もしくはサーバー仮想化で集約する。お客様が使っている古いサーバーを、大阪に移設する代わりに最新のものに無償で載せ替えますとか、仮想化集約していいですかとか、それに同意いただいたサーバーとして600台くらいが東京から減りました。

ただ、データセンターというのはそもそも消費電力が多い場所なので、以前から節電の取り組みはしていました(図2)。まず一般的な方法として、アイルキャッピングです。ここで重要なのが、サーバーは冷やさなければならないのではなく、放熱をしなければいけないということです。どうしてもサーバーを冷却するという意識になるのですが、26℃くらいまでは正常に動くといわれています。外気温が26℃だったとしても、熱をきちんと放出すればいいのです。逆に、冷房を19℃で入れても、排熱が回ってきてサーバーの吸気ファンのところでは19℃の冷気と30℃の排熱が混ざっていてはだめなのです。冷気と暖気を完全に分離することで、冷気側の設定温度を上げることができます。当社でも、空調の吹出し口は20℃くらいに設定してあった温度を、最高では26℃まで引き上げました。

図2 既存データセンターにおける省エネ対策(出典:さくらインターネット)

図2 既存データセンターにおける省エネ対策(出典:さくらインターネット)

ただ、ここで注意していただきたいのですが、30℃くらいにしてもサーバーは動くという話があります。それは正解ではありますが、30℃くらいになるとサーバーのファンがびゅんびゅん回り始める。そうなると、空調費が下がってもサーバーの消費電力が上がってしまいます。そこはバランスですね。

二番目は、先ほど富士通の北中さんもおっしゃっていましたが、室外機に水をかけることです。ただ、場当たり的にホースで水をかけるのではなくて、実はデータセンター向けのソリューションが出ています。というのも水道の水はカルキが入っていますので、機器が腐食しないように少し調整してやる必要があります。システム化されたソリューションがありますので、当社ではそれを導入しています。

あとは、風向版、ルーバーの採用ということで、熱溜まりができないようにします。最後に、省エネインバータの導入です。実は、データセンターで使われているモーターの数は非常に多いので、それらをインバータに交換するだけでも空調費が10%から15%下がります。

設定温度を上げると電力消費は下がる?

——温度の話が出ましたが、ASHRAEのガイドラインも2004年と2008年を比べると稼働に妥当だとされる温度範囲は広がっていますね(図3)。空調の設定温度を上げたという話はよく聞きますが、実際どれくらい効果があるのでしょうか。エクイニクスでもサーバールームの温度は変更されましたか。

図3 2008 ASHRAE Environmental Guidelines for Datacom Equipment

図3 2008 ASHRAE Environmental Guidelines for Datacom Equipment

古田●空調の設定温度を3℃上げると電気を10%セーブできるというのが都市伝説のように言われていますが、実はまだ誰も証明したことがありません。我々も今回の震災でご多分に漏れずさまざまな対策をとり、世界中のお客様に「ことによったらサーバールームの温度を上げるかもしれません」というお願いをしました。文句が出るかと思いましたがまったくなくて、とりあえず温度を上げてもよいというお墨付きは手にしたわけです。といっても、結局上げる必要はありませんでした。実際には、サーバールームの温度を上げたらどの程度の電力削減効果があるかという統計情報は取れていません。

ただ、一応グローバルでいろいろなところで試してはいます。その結果、もちろん条件が違えば結果は違うので一概にはいえませんが、3℃で10%という結果は出ていません。消費電力削減に一番効果があるのは、やはり空調機を間引いて運転するということです。

——館林でも温度を上げたそうですが、効果の実感はありますか。

北中●吹き出し温度を上げたことだけですごく省エネになったということはないですね。当社の場合は水冷式で、水を冷やす冷凍機の運転時間や水量が減る分、若干下がったということはあります。ただ、10%というレベルには全然至っていません。ちょっと安心感があるだけのような気もします。

——この辺り、専門家の佐志田さんの見解をお伺いできますか。

佐志田●2つのお話が出ました。ひとつは、設定温度を上げると省エネになるという都市伝説は本当か、それから省エネをするにはどこを減らすのがよいか。

まず都市伝説の件ですが、空調は何をやっているかというと、暖まった熱を外へ出しています。冷却に必要なエネルギーは移動させる熱量がどれくらいかで決まります。ご家庭の空調では、外の温度が35℃で室内を25℃に冷やす場合、エアコンは10℃分の熱を外に出すという仕事をします。10℃分のエネルギーが必要ということです。これを、3℃上げて28℃にするなら、温度差は7℃になりますから、必要なエネルギーは7℃移動させる分になります。仕事の量が10分の7になるのだから、必要なエネルギーは30%少なくて済む。これは、真実です。

ところが、データセンターでは、サーバーが常に熱を出しています。空調は室内にある熱を処理してお終いというわけではなく、サーバーが出している熱を処理し続けるので、設定温度を変えても必要なエネルギーは大して違わないのです。というわけで、この都市伝説はデータセンターでは成り立ちません。

それではどのように省エネをしていくかということですが、特効薬があるわけではありません。ここまで聞いていただいたように、小さな積み重ねが必要ということになります。電気を使っているのは空調機・冷凍機といったところですから、冗長性を持っている部分を減らす。また、インバータの話が出ましたが、ファンのモーターは回転数の3乗に比例して電力を使います。たとえば回転数を80%に落とすと、0.8×0.8×0.8で、約50%省エネできることになります。

郊外型なら上下の暖気分離が可能

——海外のデータセンターでは、日本にないようなユニークな取り組みで省エネしているところがありますね。

古田●データセンターにはいろいろな分類がありますが、ユーザーに近いところ、巨大なサーバーファーム、その間をつなぐものという3階層に分類することができると思います。サーバーファームはよく山奥などに規模の経済で巨大なものを作りますが、ユーザーに近いところではネットワークのレイテンシなどが問題になるので都市型になる。山奥のサーバーファームなどでは、外気冷却一辺倒のようなこともできます。その他に、地熱や地下水を利用しているケースがあります(図4)。これはオランダの郊外型の例ですが、地下にある冷水やお湯を季節に応じて組み上げて熱交換し、空調費を抑えて、PUEは1.1を実現しています。

図4 Aquifer Thermal Energy Storage System(出典:エクイニクス・ジャパン)

図4 Aquifer Thermal Energy Storage System(出典:エクイニクス・ジャパン)

昨今、コンテナ型データセンターが話題になっていますが、我々は主に雑居ビル型のデータセンターなので使っていません。むしろ大空間で、米国の例では天井高が15mとか20mというところもあります。天井を高くすることで、上から冷たい空気を落とすと、それと入れ替わりに暖かい空気が上の方へ上がっていく。上下での暖気・冷気分離ですね。上の熱溜まりを外に廃棄するには、さほどエネルギーは必要ありません。空調ユニットから冷たい空気を送り込む部分は、ファンを分散させずに集中する(図5)。これもPUE値はよくなります。

図5 天井の高さを利用したHot/Cold方式(出典:エクイニクス・ジャパン)

図5 天井の高さを利用したHot/Cold方式(出典:エクイニクス・ジャパン)

——海外は郊外型が多いので天井の高いものが作れますが、日本は都市型が多いですからなかなかそうはいきません。さくらインターネットは石狩に郊外型データセンターを作りましたね。

田中●都市型データセンターはインターネット回線を調達しやすいとかエンジニアが駆け付けやすいというメリットがあるのですが、3.11の影響もあり東京以外のデータセンターを利用したいという要望も増えてきました。2011年秋に石狩市にデータセンターが完成する予定ですが、実は着工は2011年3月10日でした。資材調達を心配しましたが、すでに調達済みだったこともあり、予定通りの稼働を予定しています。

石狩というロケーションですぐ思い付くメリットは、外気が冷えていることです。普通に空調機を動かしても、熱交換にかかるコストは低い。ただそれだけでなく、それならば外気をそのまま使おうというのがひとつのコンセプトになっています。

郊外に作ると、寒冷地であるとか土地が安いということだけでなく、自由度が高いというメリットがあります。都市型データセンターは階層構造になっていることが多く、たとえば、14階建てのビルに1階2階が電気室で、その上がサーバールームで、屋上に室外機を置くというようになっています。しかし、エクイニクスの古田さんの話にあったように、天井を高くすることで自然の空気の流れを利用できます。たとえば石狩では図6のようにしています。

これは左右で別の仕組みになっていますが、左側は取り入れた外気を上からサーバーに当てています。このデータセンターは床からの冷房はまったく行っていません。ラックはスラブに直置きになっています。したがって床下に冷気を送ることができないのですが、もともと冷気は下に行くものです。ですから、冷気を緩やかに流すと、そのままラックの下の方に下がっていき、それをサーバーが吸って、暖かくなった空気は上にどんどん溜まっていく。天井裏は5mくらいあり、そこに溜まった暖気を外に出してやる。こういう仕組みにすると、ファンの容量は非常に少なくてすみます。そもそも冷却する必要がありません。ということで、非常に安価に運用できます。

右側は、冷気をわざわざ天井裏に流すのももったいないということで、横から大きなファンで流し込むようになっています。フィルタを通した外気をデータセンター内にそのまま落とし、サーバーを通って天井裏に行き、それが排気されるという構造になっています。冷気側にファンがありますが、個人的にはそれもいらないのではないかと思っているくらいです。というのも、天井裏に暖気を吸い上げる排気用のファンが付いていますし、ラックの中のサーバー自体にもファンが付いています。サーバーが吸い込むということは冷気際の気圧が下がりますから、外気はそのまま入ってきます。そうなれば、ファンの消費電力も非常に下がります。郊外で行うことによる、建物構造にまでこだわった形の省エネということです。

——右と左で冷却の方式が違いますが、両方試しているのですか。

田中●そうです。実はこのデータセンターは、冷凍機も備えています。外気が使えない場合は、従来型のエアフローを使う。順番に言いますと、冷凍機を使うのが一番オーソドックスで、安全。その次に左側の上から冷気が下がる方式。これについても米国ではかなり実績があります。右側のものが、外気をそのままということでリスクもあるが一番アグレッシブです。ということで、最初のプロトタイプとして折衷型になっています。

——右側の方式だと、サーバーへの冷気の当たり方に違い出るような気がしますが。

田中●実はそれが課題です。今、奥の方に風が来て、手前が来ないのではという話になっています。というのも、風はまっすぐ流れますので、ファンを強くし過ぎると手前の方が吸わない。真ん中は両側から冷気がやってきますので、ちょうどぶつかって冷気溜まりになる。まあ、やってみないと分からないということで。

——チャレンジャーですね(笑)。

図6 石狩データセンターの外気空調システム(出典:さくらインターネット)

図6 石狩データセンターの外気空調システム(出典:さくらインターネット)

モジュール型データセンターの利用

——もうひとつ、今後のデータセンターのあり方で注目したかったのは、分棟式ということです(図7)。こういったモジュール化を推進していることのメリットはどのようなことですか。

図7 分棟式によるデータセンター施工の分散化(出典:さくらインターネット)

図7 分棟式によるデータセンター施工の分散化(出典:さくらインターネット)

田中●通常、データセンターは部屋単位やフロア単位で、最初に5年後、10年後のサイズを考えて作ります。そのため、開業当初は稼働率が低くなり、それがデータセンター事業者の悩みの種です。当社も、ある程度大きく作らないとコストが合わないが、大きく作ると無駄が出るというジレンマを抱えていました。コストと稼働率を両立させるために、最近コンテナ型やモジュール型のデータセンターが流行っているのだと思います。

石狩は、一期工事で第一棟目と第二棟目のつながった部分を作ったのですが、トータルでは8棟建つ予定になっています。しかしながら8棟全部建てるというのは非常に大きな投資が必要なので、今回は一部のみを建てたわけです。ただ、電源設備は建物以上に費用がかかります。メンテナンス、部品交換、維持費も必要です。そこで今回は、100ラック単位でDとEの2ゾーン、200ラックのみを作っています。これによって、かなり投資が抑えられます。

たとえば、従来型モデルと石狩モデルを見ると(図8)、石狩ですから当然土地代が安い。そのうえ、設備費が安くなっているのは、PUEがよくなっているのでトータルの電気設備が減らせるということです。ただ今回注目していただきたいのは、投資階段の段の高さと階段のくるタイミングです。たとえば従来モデルでは、200ラックごとに大きな階段のタイミングがやってきます。設備を大きく増強する何十億という投資が必要です。しかし、100ラック単位、実は25ラック単位で増強できるのですが、そういう小さい単位で増設することで、階段の回数を増やしながら一段の高さを減らすことができます。

図8 従来モデルと石狩モデルの投資モデルの比較(出典:さくらインターネット)

図8 従来モデルと石狩モデルの投資モデルの比較(出典:さくらインターネット)

もう1つのメリットとしては、最新テクノロジーへの対応です。5年前、10年前を思い出してほしいのですが、今とはまったく状況が違いました。データセンターもこれほど発展はしていませんでした。ですから、5年後、10年後はまた新しいテクノロジーが広がっているだろうと予想できます。そう考えると、建設当初にすべて作ってしまわずに。5年後にはそのときの最新のテクノロジーを使った方がいいということがあります。また、データセンターでリノベーションするときも、それこそ1000ラックのリノベーションは非常に大変ですが、100ラックずつ10年後、20年後にリノベーションできる。ということで、投資単位を小さくして、テクノロジーの世代差も小さくしていくというのが今回のモデルです。

——すでにいくつかのベンダーからモジュール型データセンターが登場しています。規格化されてモジュール化されていると投資を小さくして段階的に増やせるのがメリットですが、富士通館林でモジュール型を取り入れる可能性はありますか。

北中●データセンター事業者の立場ではまさに喫緊の課題です。お客様を受け入れるスペースをある程度キープしておかなければいけないので、そこは先行投資という形になる。それを少しでも抑えたい、タイムリーに追加したいというと、これからモジュール型という考え方は出て来ると思います。

ただ、すべてがコンテナに入るということではないでしょう。一般のサーバー機器をコンテナ型データセンターで運用するのは難しいと思います。もっと温度が高い環境で動く条件になってくれば、飛躍的に増えるのではないかと思います。

——エクイニクスではいかがですか。

古田●データセンターが何のためにあるのかという話になると思うのです。モジュラタイプというのは、設備投資をゆるやかにするためのひとつの方法ですよね。建築でもメタボリズムといって、だんだん増やしていく手法があります。しかし、いわゆるコンテナタイプということになると、これは1つの巨大なサーバーみたいなもので、規格化された同じ1つのサーバーを使える会社がどれぐらいあるかという議論だと思います。

我々はグローバルで年間500〜600億のデータセンターの設備投資をやっていますが、これ以上使っている会社は世界中に2社しかありません。その2社とは、マイクロソフトとグーグルです。彼らの規模になれば、いわゆるサーバーファームをコンテナ化するメリットが非常に大きい。つまり、彼らは自分たちが運用する範囲でコンテナ化する意義があるということです。一方、我々のような雑居ビル型、格好良く言うとマルチテナント型で展開するには汎用性が必要です。コンテナの中はお客さんの要望通りにする必要があり、極めてフレキシビリティが要求されるITリソースに対応するのは厳しい。

とはいいながらも、「クラウドのアーキテクチャに向かうことは間違いないと」ということはよく言われます。クラウドに行くということは、クラウド側にあるリソースを利用するアウトソーシングを意味するので、そのときにモジュラ化したコンテナタイプのアーキテクチャは入ってくるだろうと思います。

——皆様、本日はどうもありがとうございました。

03/08のツイートまとめ

... 2ch以外にもフリーのレンタルサーバーとかに関しても考えないとな。2ch自体は分裂すれば容易に生き残れるだろうけれど、フリースペースにある価値のあるページは生き残れない。そっちの方が、損失として大きいように感じる 03-08 03:21 と言うより ...

デスクトップ仮想化への取り組みを強化する【Microsoft】Part 2-3

進化するデータセンターの仮想化

文:川添貴生

Winows Server 2008 R2で構築できる2つのデスクトップ仮想化環境

Microsoftが2009年にリリースした「Windows Server 2008 R2」は、従来バージョンである同2008からさまざまな機能強化が行われているが、なかでも注目したいのが、デスクトップ仮想化に関するものだ。従来のターミナルサービスは「Remote Desktop Services(RDS)」と名称を変更していくつかの機能強化が図られたほか、ハイパーバイザー型の仮想化環境である「Hyper-V」は2.0へとバージョンアップしている。リモート操作のためのプロトコルである「RDP(Remote Desktop Protocol)」も7.0(現状の最新バージョンは7.1)へと進化した。このようにWindows Serverは2008から2008 R2へとバージョンアップするなかで、本格的なデスクトップ仮想化環境を構築できるサーバーOSへと進化しているわけだ。

このWindows Server 2008 R2で提供されているデスクトップ仮想化環境は、大きく2つに分けられる。1つはサーバーOSのマルチユーザーセッションを利用した、ユーザーごとのデスクトップをリモートで利用するという形式(RDS)(図1)、もう1つはそれにHyper-V 2.0を組み合わせ、それぞれのユーザーごとに仮想環境上のOSを割り当てる形式(VDI)だ。

図1 Windows Server 2008 R2 Remote Desktop Services (RDS) architecture

図1 Windows Server 2008 R2 Remote Desktop Services (RDS) architecture (出典:Microsoft Technical Overview of Windows Server 2008 R2 with Service Pack 1 - Remote Desktop Services)

両者の違いとして、まず大きいのはハードウェアへの負荷になる。Windows Server 2008 R2のデスクトップを複数のユーザーで共有するRDS環境では、個々のユーザーごとにOSを立ち上げる必要がなく、それだけオーバーヘッドも小さい。一方、VDI環境はHyper-V 2.0による仮想環境上でユーザーごとにOSを立ち上げることになるため、ハードウェアの負荷が大きい。つまり同じハードウェアリソースであれば、RDS環境の方がより多くのユーザーを集約できる。

もう1つ、両者の違いとして大きなポイントになるのがライセンスコストである。まずRDSを利用するには、ユーザーごとに「RDS CAL(Remote Desktop Services Client Access License)」が必要になる。このライセンスは買い切りで、価格は4000円〜5000円程度。一方、VDI環境では「Software Assurance」もしくは「Windows VDA(Virtual Desktop Access)」が必要になり、1台当たり1万円近いコストが1年間で発生する。ライセンスコストから考えた場合でも、RDS環境に軍配が上がるわけだ。

ただRDSのデメリットとしては、共有デスクトップ環境であるため、ユーザーごとのカスタマイズに対応しづらいことが挙げられる。メールクライアントやWebブラウザ、あるいはExcelなどのアプリケーションしか利用しない定型業務であれば問題にはならないが、ユーザーごとに環境が異なるような職種ではRDSを適用しづらい。その場合はVDIが選択肢となる。

なお、RDSとVDIのいずれを利用する場合でも、画面転送に使われるのがRDPと呼ばれるプロトコルだ。このプロトコル自体は従来から使われているものだが、Windows Server 2008 R2ではRDP 7.0、そしてWindows Server 2008 R2 SP1でRDP 7.1とバージョンアップが行われている。

まずRDP 7.0では、マルチメディアファイルの描画処理を基本的にクライアント側で行うようになったことが従来バージョンとの大きな違いになっている(ほかにも、マルチモニター、リモートオーディオ録音のサポートなどがある)。サーバー側で描画した結果を送信するのではなく、描画命令だけを送信し、実際の描画処理はクライアント側で行うことにより、スムーズな動画再生などを実現しているのが特徴だ。

RDP 7.1ではRemoteFXと呼ばれる仕組みが追加された。これはVDI環境において3Dグラフィックスをサポートするための機能だ。具体的には、サーバーに搭載されているGPUを利用して3Dグラフィックスをレンダリングし、その結果となるビットマップデータをネットワーク経由で配信するという仕組みになっている。サーバー側にGPUを搭載するというハードルはあるが、3D CADなどのアプリケーションを利用するケースでもVDIを適用できるようになった意義は大きいだろう。

アプリケーションの配信を可能にするRemoteAppとApp-V

Microsoftではアプリケーション配信にも積極的に取り組んでいる。その前段となったのが、Windows Server 2008で提供された「RemoteApp」だ。これはサーバー上で動作するアプリケーションをターミナルサービス経由で操作するという仕組みで、そのアプリケーションのウィンドウをローカルで動作しているWindows上に表示して操作できる。

RemoteAppを利用するメリットとしては、エンドユーザーが利用するクライアント側にアプリケーションをインストールする必要がないことが挙げられる。さらにファイルのコピーなどが不要なほか、エージェントなどもインストールせずに使うことができる。具体的な用途としては、たとえばバージョンの異なるアプリケーションを利用したい場合などが考えられるだろう。ふだんは最新のOffice 2010を利用しているが、以前のドキュメントを正確に再現したい場合だけサーバー上にインストールしたOffice 2003を利用する、といったケースだ。

さらに現在では、それに加えて「App-V」と呼ばれる仕組みも提供している。RemoteAppとの違いは、サーバー側ではなくローカル側でアプリケーションを実行するという点だ。このため、利用時にはネットワーク経由でアプリケーションの実行に必要なファイルを配信する処理が必要だが、1回配信されればローカルにキャッシュされる。このため、その後はオフラインでも利用できる。

このApp-Vの特徴として、レジストリや共有DLLなど、アプリケーションの実行に必要なOSのモジュールやファイル、レジストリ設定を仮想パッケージ化することが挙げられる。このためユーザー側ではインストール作業を行うことなく、ファイルを配信するだけでアプリケーションの実行が可能になっているわけだ。

このApp-VはVDI環境とも組み合わせて使うことにより、OSイメージを集約しつつ、ユーザーごとに必要なアプリケーションを展開するといった、動的で柔軟な運用が可能となる。

従来、OSとアプリケーションは強く結びついていたため、ユーザーによって利用するアプリケーションが異なる場合、それぞれにOSを用意する必要があった。しかし利用するOSが増えれば、当然管理コストも増大する。せっかくVDI環境を構築しても、多数のOSを運用するようではコストメリットを十分に追求できない。

しかしApp-Vを利用すれば、OSはVDI環境で提供しつつ、その上で動作するアプリケーションはApp-Vで配信することが可能になる。つまりOSとアプリケーションを分離できるわけだ。これならOSを極力集約しつつ、それぞれのユーザーの業務に合わせて最適なアプリケーションを提供できる。これがApp-Vを利用する最大のメリットだろう。

なお、App-Vで配信されるアプリケーションは、それぞれ個別の空間で動作するため、本来同時に実行できない複数のアプリケーションを1台のマシン上で利用するといったことも可能になる(アプリケーションの競合の回避)。たとえば異なるバージョンのJava VMを利用するアプリケーションを1台のマシン上で同時に実行するといったことができるわけだ。またアプリケーションの改修を行いたいといった場面において、サーバー側で管理しているアプリケーションだけをアップデートすればよいこともApp-Vならではの魅力だといえる。

デスクトップ仮想化環境の管理ツール

このほかMicrosoftでは、VDI環境で提供しているデスクトップを一元管理できる「Microsoft System Center」を提供している。これによりHyper-V上で動作しているクライアント環境を監視することが可能になるほか、サーバー自体やApp-Vを通じて提供されているアプリケーションまでを統合管理できるのは大きな魅力だろう(図2)。

図2 SCVMMによる仮想システム全体管理

図2 SCVMMによる仮想システム全体管理
System Center製品ファミリの1つSCVMM は、Hyper-V 2.0、Hyper-V 1.0、Virtual Server 2005 R2、および VMware ESX/ESXi Server に対応し、複数の仮想化テクノロジーの混在環境を同一の管理コンソールと同一の手法で一元的に管理できる仮想化環境管理ツール。(出典:日本マイクロソフト)

そのほか注目したいプロダクトとしてあげられるのが、軽量版のWindows 7ともいえる「Windows Thin PC」だ。これはSoftware Assuranceを利用しているユーザー向けの特典の1つとして提供されているものであり、RDS/VDI環境にアクセスするためだけのOSとして利用できる。フットプリントが抑えられているため、Windows XP時代のPCにWindows Thin PCをインストールし、Windows Server 2008 R2上に構築したRDS/VDI環境にアクセスするためのマシンとして再利用するといった使い方が考えられる。

このようにMicrosoftは、デスクトップ/アプリケーション配信からその管理、そしてPCをシンクライアント的に利用できる軽量OSまで、着実にカバー領域を広げつつある。さらにSystem Centerで統合管理できるなど、それぞれの機能間での連携もしっかり図られている。こうしたVDI環境を今後登場するWindows Server 8/Windows 8でどのように進化させていくのかも要注目だ。